歯胚の形態が将来どのように変化していくかは歯胚自体にはなくて顎骨側にある。すなわち、各歯群において遠心に位置している歯ほど先天的に欠如しやすい歯になっている。このことを説明する前に、まず歯の形態形成の理論について解説しなければならない。バトラーは中生代白亜紀の化石哺乳類および現生哺乳類の研究から次のように述べている。
歯胚はすべてが同一の遺伝構造を有し、お互いに等価と考えられため、適当な場に位置すれば歯胚はその場に応じて将来の形が変わってくる。3つの歯種の中で最も典型的形態を示す歯は、切歯では上顎中切歯、犬歯では上顎犬歯、臼歯では上下顎第一大臼歯で、これら特定な歯から近心もしくは遠心へ離れるほど形や大きさのばらつきが大きくなる。
大臼歯場では第1大臼歯が最も早く発育するため、場の影響を最も受けやすく、この効果は遠心に位置する他の大臼歯が形成されるにつれ減少し、より遅れて形成される歯はその大きさや形が退化する傾向にあると考えた。先天欠如が最も少ない歯は上顎中切歯と上下顎第1大臼歯で、この歯がなくなることはまずないといわれている。